約3年以上ぶりのブログ更新です。園主がブログの担当で、「月1回更新を目標にする」と息巻いておりましたが、3年もの間、途絶えてしまいましたので、たまーに副園主の妻が更新させていただくことにしました。

園主も心を入れ替えて、たまにブログを綴るかと思いますので、懲りずにお付き合いくださいませ。

穂坂町のピオーネに袋がかかりました。袋がかかるということは、「ぶどうの房への様々なお手入れは終わり、あとは収穫を待つばかりとなりました」という象徴で、私たちもこれまでのぶどうへの作業が一区切りとなりホッとします。まだ、ピオーネ以外の品種の摘粒や袋掛けが残っていますが、ここは大きな畑だったので達成感もひとしおでした。

そんなこんなですが、もう今月末になれば南アルプスの畑でデラウェアを皮切りに収穫ラッシュが始まります。
収穫を意識すると今年のぶどうの出来について思いを馳せてしまいます。

思い起こせば昨年は、ぶどうの粒が大きくなる時期、熟す時期にあたる梅雨にほとんどと言ってよいほど太陽が出ず、気温も低めで、「早く梅雨が明けて太陽が出てほしい」と思っていたことを思い出します。
熟し時期の気候のせいか、晩腐病という病気もきちんと対策をしていたにも関わらずチョコチョコと発生し、そして、何よりカベルネ・ソーヴィニヨンが病気で大きなダメージを受けました。

今年は萌芽や葉っぱが出る5月の時期に雨や低温の日が続き、新芽の成長に時間がかかりました。この間に丸腰の赤ちゃんたちにベト病の菌が入り込んだか、特に穂坂町の畑でベト病がチラホラと出ています。
ベト病と向き合うことが初めてだったので、どう対処したら良いのか、いろいろと悩みました。
また、今は抑え込まれているように見える病気が、今後の気象次第でどうにかなるのか、そう深刻に捉えることはないのか。

写真のように、今は立派に順調に育ってくれているように見えるピオーネ。無事に袋に入ってくれたけれど、収穫の時にピカピカな姿を見せてくれるのか。
色はきちんときてくれるのか。昨年のように梅雨が長引けば、また晩腐病などが出てこないか。
梅雨の雨のなか作業をしていると、いろいろな不安な思いを巡らせてしまいます。
ぶどうで失敗はその木に対する1年の作業が水の泡になるので、心理的にも物理的にもダメージが大きくあまり経験したいことではありません。

こんなケースは早めにこういう対策を取った方がいい、一般的にはこんな対策だけれどもっと積極的な施策が必要だ、ベト病は舐めたらいけない、などなど師匠や先輩の言っていた言葉を思い出して、その不安を実際に目の前にして初めて、改めてアドバイスが身に沁みてきます。

でも、ぶどうの師匠の病気についての対策や言葉を思い出してみると、経験をせずに言っている言葉じゃないな、と。師匠や大先輩もどこかで病気と向き合い、その影響や不安と闘ってきたからこそ、そういう対策に行きつき、アドバイスを私たちにくれているんだろうな、と。

県内で尊敬されている一流ぶどう農家の大先輩が、「俺もいろいろ失敗もしてきたよ」と園主に語ってくれました。今では失敗なんていう言葉は似あわない方ですが、そんな方でも不安と闘ったり、ダメだったとガッカリしたり、そんな経験があったのでしょう(信じられないですが)。

そう思うと少し、不安に負けずにやるしかない、もし失敗しても心折らずにそれを学びに変えて今後に生かせばいいじゃないか、という気持ちになります。

就農して6年目ですが、毎年、出現する病気、虫や気象条件が違い、ぶどうの木に起こることはまだまだ初めてのことばかりです。
近くの畑の今でも畑に出ている90歳の大ベテランおじいさんは、
「おぉー、いい枝が出てきてるなぁ!こりゃぁ、いい房がなるぞー!」、
「いい房つけてるなぁ!こりゃぁ、いいぶどうになるぞー!」などといつもおおらかで、話すだけで前向きな気持ちになり元気がもらえます。
いつか、この大先輩のようにおおらかな気持ちで畑に立てる時が来るのだろうか。
10年くらいやれば「あー、この状況、前にもあった。こうすればいいんだ。」と初めてではないことが出てくるのだろうか。

ただ、人間の取れる対策もたくさんありますが自然相手なので限界もありますし、「あとは祈るだけ」という状況が多くあることも事実です。

しばらくは毎年こんな風に初めてのことだらけなのかな。起きたことをきちんと受け止め冷静に臨機応変に対処して、あとはなるだけ、ぶどうをお世話できる幸せを感じながら、自然が与えてくれる不安もひっくるめて楽しんでいけたらいいね、とそんなことを夫婦で話しながら畑に立っています。

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